実技

 
 
「相手がどんな素人でも、其奴が”死ぬ気”で襲ってきたら、確実に護りきる自信は無い」
「もし、そうなったら?」
――俺が、君の代わりに死ぬさ。」
―――― 『映画:The Body_Guard』より

0.己を見極めること

 「己を知り、敵を知れば、百戦危うからず」、中国の兵法書『孫子』に書かれている言葉であります。
敵と相対しうるには、敵の実力を確実に把握するのと同時に、己の実力を知ることが必要だと思います。
現在の実力は、自分には何ができるのか、何が出来ないのか。
 出来ないならば、出来る存在への伝て(コネ)等の、代用手段の有無を確かめなければならない。
極端な話が、「自分は自力でクライアントをどの程度まで守りきれるか!?」である。
攻め込んでくるのが、有象無象なら、まともな【カブト】なら防御はできるだろう。
 ただし、自分がどの辺までなら守れるかという見極めは必要である。
トループなら応戦できるのと、
サイバー“サイコ”な連中や、“業物”でカチガチに武装されたガ○キチどもを
相手できるのとはレベルが行って帰ってくるほど違う。
あるいは、無害な顔をしてやってくる論客や、電脳空間から忍びよるサイバーテロル……危険は挙げればきりがない。
適当でもいいから、どの辺までならいけそうか<見切り>をアクト前にいれてみましょう。
 それが、プレイスタイルの指針になることだってありますから…
(シンマイを演じるのか、プロを演じるのか? 肉体労働型か頭脳型か?)

1.導入(性格とビズへの対応)

オープニングフェイズは、キャストの個性を見せつける場です。少なくとも私はそうおもいます。
目が覚めて、夜明けを見つめながらオレンジジュースを飲むのも良い。盛り場でチンピラを殴っているのもいいだろう。
とにかく、RLが許してくれるなら「キャストの日常生活はこんなんだ!」というのをここぞとばかりに みせつけるのだ!
 キャストが初顔見せだったり、特にコンベンション等ではRLを含め全員に自分のキャストの生き様を見せないとお互いの関係がつけ辛いということもあるだろう。
というか、どうせこれから大騒動に巻き込まれるんだ。ここくらい日常を満喫してもいいだろ?

さて、専業カブトの導入と言えば、“護衛依頼”である。手抜きRLの常套手段と畏忌されているが、これが一番
カブトらしいといえば文句は言えないのも、悲しい性である。“王道”とは、世の大半が納得するから王道なのである。

ブロッカーから電話がかかって来た。
「やあ●●君。壮健かね? 実は、きみに仕事の話があるのだが……」

 【カブト】的アクトの半数はこれで始まるのではないだろうか?
ここで、月並みな対応をしてサクサクオープニングを終えさせるのも、ゲーム進行を円滑に進める
手段のひとつであるが、ここで一つ遊んでみるのも面白い。
キャストの性格はどうであろうか? ビズへの関心はいかがなものであろうか?
たとえば、金にガメツイ性格のキャストなら、「いくらだ?」と仕事内容も聞かずに答える方法がある。
「で、誰を守る?」ブロッカーに全幅の信頼を置いている(或いは口答えの出来ない)立場ならそう答えるのもいいだろう。
「そいつは、“裏”がある奴じゃないだろうな!?」、悪人は守らないというポリシーを貫くなら、こういう答えも出来る。
 間違えちゃいけないのは、たとえ“アーキタイプ”なオープニングでも、キャストの性格を表現する場はいくらでもあるということである。
特に、気心の知れた仲間(<コネ>)同士ならいざ知らず、初対面の相手なら仕方のないことであろう。
これを書いている金川だって、“日常を満喫”するアクトでもないかぎり、半分ぐらいの割合で“アーキタイプ”な導入をする。
金川の書いた駄作(ブルジョア達の午後)をみてみな。シェーナやアストラの導入の何割が“アーキタイプ”な導入かを……

 現実を愁うよりも、現実を受容れ、それを活かす方がたのしいのじゃないか? 憂うだけでは先に進めないのだ

 

2.展開(リサーチとクライアントとの対応)

 恙無(つつがな)く、契約を済ませれば、君のやるべき事は1つだけだ。

「カブトとしてクライアントを護る事」

この1つである。無論、これがもっとも難しい事である。
恐らく、大抵のフリーランサーは「誰かの首を落としてくる方が楽だ」と言うだろう。
 なぜか、それは攻めるより護る方(受動側)の方が労力を有するからである。
「籠城側は1/3の兵力で構わない」
故事を例に、防御は目的がハッキリしている分、襲撃より楽だという方も居るであろう。
しかし、この故事は「情報」「兵站」等々の用意が万全の場合を前提にしている。
 仮に、貴方が誰かを暗殺しようと思った。では、どうやって殺す? 方法を列記してみよう。

・物理的に襲撃する
・長距離から狙撃する
・爆発物を仕掛ける
・毒を盛る

そうとう、アバウトに考えただけでも4種類の方法が挙げられる。
襲撃方法が解らない場合は、最低でもこの4種の警戒をしなければならない。
無論、手段(細かい作戦)は無尽蔵だ。 ハッキリ言って辛い。 
 他にN◎VAには精神戦の要素もあることも忘れてはいけない。仲間面した論客にも注意しなければならない。
……では、どうするか? 
 まず、必要なのは「選択肢を絞る」ことである。
要は、襲撃者についての情報を集める事だ。
最低限集めるべき情報は

・襲撃者の個人情報(スタイルが解ればなおよし)
・得意とする得物/殺しのスタイル/ポリシー
・なぜ、依頼主を狙うのか(【クロマク】がいるかもしれない)
・襲撃予定日/方法

この4つである。間違っても、自分が調査に出てはいけない。依頼主を放りだして調査にいく【カブト】なんて、笑い話に
しかならない(無論、<※見えざる盾>が使える状況下ならば話は別)。
 となれば、他のキャストや<コネ>に頼らざるを得ない。 後、クライアントの傍にいながら調査をする方法として、ウェブの
利用が挙げられる。<セキュリティ>との兼ね合いもあるので、余裕があったら<社会:ウェブ>はもっていてもいいかもしれない。

2−1.展開2(護ると言う事)

 では、直接的な守備はどうするべきであろうか? 一番適当な方法は、依頼主に張り付く事である。
ボディーガードの技術的な手法は、いろいろ存在するし、教科書みたいな本も通常流通している。
私の生兵法をきくよりそちらの方が確実だと思う。
 そもそも、N◎VAは、“イメージ”や“ロールプレイ”を最重視するシステムであり、あまり“技術”的な事を云々していると
快適さが阻害されるおそれがある。 身も蓋もない言い方だが、N◎VAにはそこまで精密な戦闘ルールは存在しない。
そういった緊迫感を(実質的なルールとして)味わいたいのなら、他のサイバーパンクシステムを行うべきであろう。

 ……とはいえ、これはあくまで私見であって、RLの中には技術的な警護を求め、その隙をついて襲撃しようと考える
方が居るかもしれない。 ……私は、勘弁して欲しいのだが。そもそも、RLは第三者的に世界を見渡せ、キャスト全ての
能力を把握しているのである。目の前しか見えないキャスト(PL)と「同レベルで騙し合い」ができるはずがない。
 トーキョーN◎VAは、『RLとキャストが協力して話を創り上げる』システムであり、RLとPLが勝敗を競い合う『シミュレーションゲーム』では決してない。

閑話休題。

 まあ、仮にそういう場合に、最低限守るべき(有知識者からみれば当然の)護衛法をいくつか列記します。
シビアな場合でなくても、演出でやれば“格好いい”と思いますので、気が向けばやってみるのもよいかと…

・依頼主の身辺な人(雇用人も含む)を洗う
※身内/雇用人が犯人と言う事は王道です。

・窓にはカーテン(ブラインド)を必ず降ろす
※室内を見えなくするだけで、狙撃の危険性は激減します

・決まった道筋を通らない
通勤路も複数用意し、その都度かえるようにする。これで待ち伏せの危険性は減らせる。

・空路を多用する
※N◎VAのように、ある程度の治安が確保されている都市部に限る。
 街中で戦闘機を飛ばしたり対空火器を用意するバカは少ないはずだ。 
  その分、設備点検はしっかりと。事故に見せかけた暗殺は多用されるはずだ。

・ヴィーグル内は、一種の密室である
※万が一襲われた場合、ヴィーグル内は逃げ出す事の出来ない密室である。警戒せよ

・室内をくまなく探せ
※依頼主の私室やオフィスに、盗聴器や爆薬を仕掛ける事は基本だ。定期的に点検せよ

・マンホールの上を通るな
※下にある地下水路は、そのまま逃走路に早変わりする。 また、マンホールの裏に爆薬を仕掛けるという方法もある


……と、危機管理は挙げればキリがない。 とりあえず、やってはいけない事として『依頼主の生活を破壊する』ということがある。
一番確実に依頼主を護るなら、自分と依頼主の2人きりで『砦』や『核シェルター』にこもる事だ。
 これが最悪の手段であることは、周知の事であろう。 仮に、生き延びたとしても依頼主の日常生活は破滅する。企業の最高責任者が業務を放りだして籠城したらどうなるであろうか? その会社は業務が立ちゆかなくなる。株主や役員も黙っていないであろう。 “命の代価として、今の身分を捨てろ”、そんな要求をのむ依頼主など居るはずはない。



3.決着(依頼の完遂)

 依頼が終了する条件は2つある。

・依頼主に危険がなくなった
・護衛の期間が終了した
・任務の失敗

「危険が無くなった」というのが、ベストの決着であろう。依頼主の壮健を喜んでやればいい。
「護衛の期間が終了した」場合は、恐らく依頼の更新が打診されるであろう。専属ボディガードとして就職しているならば
ともかく、フリーランスの人間を雇用するときは、「護衛期間」を設定する。 そのカブトが“正義の人”ならともかく、報酬を代価に
依頼を行うならば、「1週間」とか「1月」と時期を区切るであろう。
 依頼を継続するかどうか、それはキャストが判断すべきであろう。判断する要素は…たった1つ

「貴方は、この人物の代わりに命を払えるか」
 


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(あ、「金さえもらえばいい」という、ドライなカブトのアクト指針をかいてないや☆)