打ち上げ花火の炸裂音を背景に血戦の火ぶたが切って落とされた 「デアエ デアエ!」 血染めのジェシーの叫び声に呼応し、漆黒の全身タイツに安っぽい浴衣を着た三下が側転や爆転といった特撮アクションを駆使しながら雑木林に現れた。 「ウホッ!? 今日の三下は秘密結社の戦闘員風か!」 「皆!勝ったら“ハタモト”!   死ンデモ“ヤスクニ”ニ祀ラレルヨ!」 ジェシーの叱咤に三下達は奮い立った。逃げて帰ってもムラハチブにされるだけ、勝って栄誉を得るか、死してヤスクニに奉られるか、2つの選択肢しか残されていないのだ! 「「「 バンザーーーーイイ!! 」」」 「出て来たところで、申し訳ありませんが “ヤスクニ”へお引き取りください☆」 満面の笑みを浮かべ、オンムは窃盗して来たフロリダ産の“パイナップル”を三下の群れにほうり込んだ 「「「  ナ ム ア ミ ダ ブ ツ ! ! !  」」」 三下の半数が手榴弾の爆発に巻き込まれ動けなくなった 「オノレ、ヨクモ “ジーン” ヲ!!!」 木陰から放たれたシリケンがオンムの脇腹に深々と突き刺さり、オンムはもんどり打って崩れた。 「ッ! 手前死にたいか!?」 アキラは我に返り愛用のギターを取り出すも、木立が邪魔でなかなか目標を狙えない。空しく木立の間を駆け抜けるのみ 「散開! 散開ヨ!!  敵ハ“土下座”モセズニ闘ウ、ブシドーニ悖ル“モンキー”ヨ!」 ジェシーの指示に三下は全力で散らばった。 (ハァハァ、流石手ごわい) 三下のクラウドとセフィロスは大樹を背に息をついた。 ──が、 (殺気!?) 周囲を見回すが敵の姿はない 東映時代劇を彷彿とさせる空気が流れる中 タンッ! 隣にいたセフィロスが胸板に風穴があいて倒れた 「セフィローーーース!!」 クラウドは叫んだ! 海に落ち、身動きがとれなくなった同志に“ブシノナサケ”をかけるどころか、ショットガンで止めを刺す それだけでも飽き足らず、“タチアイ”の場に狙撃を行うなど畜生にも悖る外法である。 (宮子=ゴールドマン! お前、戦死しても“ヤスクニ”に祀られる資格はない! “ゴクモン”にした後“チドリガフチ”に埋めてやる!) “千鳥ヶ淵”には戦犯の墓地が有る。そこに葬られることは『正当なる日本』にとっては末代までの恥とされた。 クラウドは、セフィロスが握っていた“間違ったカタナ”を拾い、これまた自分の“宝石を埋め込んだ大剣”と共に二刀流し発射音の方向に突撃しようとした、刹那──  ガシッ 木立の裏側から原哲雄マンガに出て来そうな見事な筋肉が顔面を押さえ付け、そのまま体を木立に押し付けた 「いいのかい? こんな所にホイホイ逃げ込んでしまって」 (ハ、ハナセ!!) だが、拳は万力のようにクラウドを締め上げ、声を立てることもできない。 木陰から見事な筋肉美を称えた“いい男”が姿を現す 「俺はノンケだって食っちゃうような男なんだぜ?」 ジィィィ ゆっくりとジッパーが下される。大樹に押し付けられたクラウドは身動きもできずその光景をみるだけであった ツナギの奥にはハンドキャノンと称される大口径マグナムが 妖しい光を放っている 「ところでこいつを見てくれ。これをどう思う?」 「すごく── 大きいです」 キャノンを至近距離からぶち込まれるのだけは勘弁願いたいクラウドは命乞いをした 「うれしいこといってくれるじゃないの」 阿部さんはサメのように嗤った 「「 ア゛ッーー!!!! 」」 (セシル、バッツ、ティナ、スコール、ジダン 二続キ セフィロス、クラウド “ヤスクニ”ニ逝ッタカ──) 断末魔の叫びにジェシーは同志の死を悟った。 浴衣を脱ぎ捨て、網タイツがまぶしい忍装束に早変わりしたジェシーは背にした“シノビブレード”を引き抜き周囲の様子を探った。 戦況は芳しくない。自分自身も立つのがやっとな重傷をおっている そんな時、BGMが変わった というかラジカセをかかえて“例のBGM”を最大ボリュームで鳴らしながらこれまたハリウッド映画に出演できそうな筋肉漢が、戦車の主砲で雑木林をぶっ飛ばしながら現れた 「トム!!!」 「HAHAHAHA!   遅参シタヨ! デモ、騎兵隊ハ勝利ノフラグネ!!」 バキバキバキ 雑木林の木立など、戦車の前ではベニア板も同然 あっと言う間に周囲が整地されていく 「ちょ、ちょっとまってよ!!! 戦車なんて聞いてないわよ」 「マジカヨ、ポリはどうした!?」 その瞬間、アキラと宮子の意識は曖昧なものとなった 「HAHAHA!!  『どっきり!』ト書イタ 看板ダシタラ  ポリースハ、興味無サゲニ帰ッテクレタヨ」 大阪市警のやる気の無さとザル具合は、かの『時空管理局』とも張り合るほどであり、公営マフィアと揶揄されているのは周知の事実である 「サア、“FINALSTAGE”ヨ!」 トムはそういってCOLT M16A2を手にヒラリと戦車から飛び降りた。 「「?????」」 ガシャン ガシャン そして、M16で闘うのかと思うと、それも放り投げ、腰のコルトガバメントも投げ捨てた 「銃ナンカニ 頼ッテナイデ、“カラテ”デ勝負 シヨウゼ!!」 「トム!!」 ムキムキの肉体美を誇示しつつ、“カラテ”と称しつつどうみてもシャドーボクシングのパフォーマンスするトム 「流石トム! “益荒男”ノ中ノ“益荒男”ネ!!」 (おい、どうするよ?) (そういわれても……ねぇ) アキラのギターにはマガジン一杯のNATO弾、宮子のマガジンにも十分な競技用の7.62mmx51精密弾が残っていた。 ここで二人が一斉掃射すればミンチが一丁出来上がって終わるだけ。 戦場でヒーローごっこしようとした阿呆が的になっただけのことである。 だが、なぜかできなかった。 ありえ無いことだがこの場は、トムのスタイル通りスタイリッシュな雰囲気が満たされていた。 「ワタシモ “カラテ”デ タタカウヨ!」 鉛のような体に渇を入れジェシーは立ち上がり、どうみても太極拳の構えをとった 「いいのかい? ホイホイ得物を捨ててしまって?  俺は生身でも十分アッー!!!く闘える男なんだぜ?」 トムと勝るとも劣らない見事な筋肉を晒しつつ阿部さんがツナギの中からM29マグナムを取り出し茂みに投げた (ゴクリ) ノンケでもホイホイついていってしまいそうな肉体美に全員の喉が鳴る 「武士二、二言ハ無イヨ!!」 の言葉に魅了されたかのように、アキラと宮子は愛銃を手放してホイホイ“決闘場”に出て行ってしまった 2vs3 銃撃戦では間違いなく勝てるはずだった。 だが、何故有利な戦場を捨ててガチンコの白兵戦を選んでしまったのか? それこそ『絶対妄想動物園』の慢心か?  “ニンジュツ”の持つ魔力か? ア゛ッーー!!!い、真夏の夏はまだ、終わらない