「――私だ。少々、調子に乗って遊びすぎてしまったようだ。此方の意図が漏れてしまった。」
「……可哀想ですが、雪に一仕事してもらいましょう。」
無音は、感情をこめずにそういった。
「激務だ。仕事を終えたら、雪に特別休暇を与える。お前から伝えておけ」
「――――承りました。」
 
「―――ということだ。雪雅代、倉敷様の身の安全のため、一働きしてもらう。」
「わかったわ」
主のスケープゴートとなることが【カゲムシャ】の勤めである。雪は、『TMS』乗っ取りは、
自分が画策した事であり、責任を『千早重工』に擦り付けた事を示す文章、音声をはじめとするあらゆる証拠を作成した。
 
「ご苦労。倉敷様から、これより休暇を取るように仰せつかっている」
「高飛びしろ…ということね。 わかったわ」
「チケットは、既に手配してある」
無音は、アタッシュケースから、小さな箱を取り出した。中を開けた雪は、驚きの表情を隠せなかった。
中にあったのは、ファーストクラスのチケットではなく、“P4”護身用拳銃であった。
「……どうした。謹んで拝領しろ」
(―――ああ)
雪は、この一年間自分の内に閉まっていた感情を解放した。
これが、倉敷と自分との絆の形なのだと。
倉敷の秘書として永年勤め上げてきた。倉敷は、数多の女性と体を重ねていたが、自分の身体を求めはしなかった。
雪にとっては倉敷の側で務める事が、雪にとっては同衾であった。
だが、それは一方的な自慰であった。
 いま、始めて倉敷は自分を求めてくれた。微笑みながら、涙を流しながら…雪は跪き、エンゲージリングを手に取った。
漆黒の祭衣を纏った司祭は、告白を無言で儀式を見守っていた。 
 
(愛されている……)
 
そう心の中で呟きながら、雪は絆の証を握りしめ……そして、契った。
 
 
TOKYO NOVA-D to Play.By.E-mail
[第4回:No_Moon-Otheres. 短命なる梢-Ephemeral plant-
 
 
■アクション一覧
04x-01:この事実を公表する
 
※このアクションをうけとったものは、リアクションに書かれている内容を公的な証拠として使用することができます。
 
 
■送信者一覧
・ピア=フィルハート
・樞 綿彦
 
 

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