シナリオ「いつかきっと微笑みを」

 

 このシナリオは、去る 1999’2.28(日)に行われた『きくたけドナドナ計画 in富山』で動話アトリエがRLとしてプレイしたN◎VAのシナリオです。
 公開と同時に、RL衆(桜久と金川)の報告書も掲載しております

 


◆背景

 新星都大学のDr.若宮修一は優秀な医学系のタタラである。彼の娘、恵は一年前に事故で脳に損傷を受け、記憶や感情、自我等が失われたいわゆる植物人間状態となっていた。Dr.若宮は三年前から大脳とデータ互換が可能なIANUSオプションを開発しており、その過程で恵の大脳データも保存してある。事故より後、Dr.若宮はさらに研究に没頭し、ついにデータを大脳に書き込むための試作品を完成させる。だが、これはデータの書き込みの際にノイズが入り、書込先の人格に精神障害を起こしてしまう未完製品だった。Dr.若宮はさらに改良を続けるが、この研究の事がどこからか漏れだし、ある時岩永と名乗る男が移籍を持ちかけてきた。Dr.若宮はこれを断るが、相手は諦めずしつこく交渉を続けてくる。身の危険を感じたDr.若宮は芳華玲に相談する。また同時に、大学側もこの件に関して動きを見せる…。

◆あらすじ

 様々なコネを経由してDr.若宮の元に集ったキャスト達は、彼を強引な引き抜きから守るために調査を開始する。Dr.若宮の開発品や彼を引き抜こうとしている会社の事を調べている内に、引き抜き工作は徐々に激しさを増してくる。キャスト達は新星都大学のスポンサーである企業連の態度が決まるまでの間、何とか彼を守り抜き、各自の仕事を成功させる。

 

◆パーソナリティーズ

「Dr.若宮」若宮修一  男、43才 タタラ=タタラ=タタラ◎●
 主要スキル 〈メディック〉〈製作:電子機器〉〈製作:サイバネティクス〉
         〈オーバーテクノロジー〉〈超テク〉等
 エンジニア気質の秀才肌。研究に誇りと強い責任感を持っている。一見、研究一筋の 人間にも見えるが、家族を愛するマイホームパパな一面もある(恵の事故以降は研究に かかりきりだが…)。娘、恵の復活と幸せを切に願う。恵が「自分の体で」微笑む事が 出来る日を夢見て…。
 ※彼の「発明品」については−リサーチ C−を参照

若宮巴  女、41才  エキストラ扱い
  修一の妻。看護婦の資格を持つ。穏やかな性格の婦人だが、芯は強い。娘、恵の体の世話をしつつ、夫を励ます。

若宮恵  女、17才(経験記憶的には16才) ニューロ=ニューロ◎ ミストレス●
 主要スキル 〈トロン〉〈セキュリティ〉〈社会:ウェブ〉〈ヴィジョナリー〉
         〈ストリームマップ〉等
  修一と巴の娘。明るく、前向きで積極的な性格の心優しい娘。屈強にもめげない健気 な娘として演出すべし。両親の事は尊敬している。一年前の事故により大脳が著しく損 傷、現在は植物人間状態。よって、このパーソナリティーは事故よりさらに一年前(つ まり、二年前)に採取され凍結されていたデータが、事故以降、トロン上で活動してい るもの。つまり、体験時間としては一年間のブランクがある。
 父が自分のために必死で開発をしてくれているのは嬉しいが、それが原因で引き抜き などの荒事に巻き込まれてしまい、申し訳ないと思っている(実際には、別に彼女のせ いではないのだが)。自分が原因(と彼女は思っている)で父に不幸が降りかかるのな らいっそ開発をやめてもよい、とも思うが、自分が復活する事は家族全員の願いでもあ るし、研究に打ち込む父の姿も好きなので複雑な気分。
 アクト中は、キャスト達の側のディスプレイやポケットロン等を通して頻繁に顔を出 す。ルーラーはアクトが停滞したときの誘導役として活用する事。「あの…、〜すれば 良いんじゃないでしょうか?」「あの…、それは〜だって聞いたことがあります」
 ※同年代には普通の女性口調、年長者には丁寧語

 ※大学構内にDr.若宮の個人ラボあり。Drの研究や家族の状況の特異性を考慮し、こういった措置がとられている。ラボは簡単な住居も兼ねており、一家はここに住んでいる。恵の世話(基本的に定期的な栄養摂取や排泄などを除けばただベッドで寝ているだけ。生命維持の多数の部分はIANUSが代行しているとする)は巴がしており、Drは研究の大方の部分を一人で行っているため、ラボと外部との接触はあまり無い。

遠山   男、34才   エキストラ扱い
  新星都大学フィクサー。スポンサー企業と大学、大学とタタラ、大学とフリーランス などを結ぶ橋渡し役。大学総合事務室所属。基本的には大学全体の事を第一に考えて行 動するが、彼は個人的に「タタラ」という人種を尊敬しており出来る限り各タタラに親 身に協力したいと思っている。タタラからの受けは悪くない。ルーラーは、彼をスポン サー企業同盟からの情報の伝達役としても良い。

深見真也  男、36才  エグゼク◎ ? ? (キャストに対応)
  イワサキの重役にして神谷医工の社長。表向きはイワサキと関係の無い神谷医工を動 かし、イワサキに利益を提供する。上昇思考が強く、今回の件は手柄を立てるための彼 の独走。なお、「岩永」とは、彼の偽名(偽造ID)

深見の部下ゲスト     クグツ◎ ? ? (キャストに対応)

神谷医工のトループ  工作員(クグツ)
           フリーランス(カタナ)

 

−−−−オープニングフェイズ−−−−

◆特別OP ニューロ(若宮恵のコネを感情で与える)

 ニューロにはウェブ上で仲良くなった若宮恵という友人がいる。彼女とはウェブでしか会った事がない。その彼女が、最近元気がない。訳を聞いてみると、タタラの父親が荒事に巻き込まれて、それを心配しているとの事。そういった事を話した後、「私がしっかりしなきゃ、ね」と言って別れる。ニューロがしつこく聞いた場合、「あなたに迷惑はかけられない」と言って去ってしまう。ここでは、それだけ。なお、彼女のアイコンは15才くらいの活発そうな女の子(人型のアイコン)。これは、彼女の15才当時(つまり、二年前)の現実世界の姿である。

◆OP クグツ(エグゼグでも代用可)

 上司から特殊任務の指令が下る。新星都大学のDr.若宮が最近何かを開発し、それが原因でどこからかに強引な移籍を持ちかけられて困っている。「彼に接触して開発品が何かを探り、かつ他社の引き抜きから守る事」 なお、開発品が判明した時点で新星都大学に出資しているスポンサー企業が集まって利権を調整するための会議を開く。それが決定した後は、他社の手出しは出来なくなる。経費としてゴールド1枚を支給、成功時にはボーナスもあり。
 千早がこの件に関わる背景…早急に開発品を調べて会議を開く事が必要。また、千早が彼を守ったという実績は後に各方面への交渉に有利な材料となる。

◆OP カブト

 ブロッカーから仕事の斡旋がくる。「依頼主は新星都大学。そこに所属するDr.若宮が最近荒事に巻き込まれて困っているので、彼をガードして欲しい。詳細は先方で聞いてくれ」 報酬はとりあえずゴールド1枚が前払い、後は状況に応じて相談。

◆OP カタナ 芳のコネを外界で与える(チャクラも可)

 芳華玲から連絡が入る。カタナはこれまでに何度か怪我等で芳の世話になっている。「知り合いのタタラから、最近荒事に巻き込まれて困っているとの相談を受けた。彼の相談に乗り、助けてあげて欲しい」 報酬はとりあえずゴールド1枚を預かっている。後は先方と相談して欲しい。

◆OP トーキー

 ※〈社会:メディア〉10に成功した場合、独自で以下の情報を嗅ぎつけた事にしてもよい。
 マリオネットの三田から連絡が入る。「新星都大学のDr.若宮が何かすごいものの開発に成功したらしい、また、それに関与してどこかの会社が強引な引き抜きを掛けた。新星都大学では珍しい事だ。この件を取材してないか」 スクープに成功すればゴールド3枚までは約束する。

 

◆OP 襲撃

 大学構内にあるDr.若宮の個人ラボ(巴と恵もそこにいる)がトループ:フリーランス(カタナ)に襲われる。彼らはただ金で雇われてここを襲撃せよと言われただけなので、何も知らない。雇い主は岩永(つまり、神谷医工の深見真也)。

−−−→リサーチフェイズへ

 

 

−−−−リサーチフェイズ−−−−

◆企業系に強い情報屋のアドレス 〈社会:ストリートor企業orメディア〉10
◆テクノロジー系に強い情報屋のアドレス 同上+〈社会:テクノロジー〉10


−−−−リサーチ A−−−−

◆誰がヘッドハンティングを仕掛けたか

〈社会:企業〉10 〈社会:テクノロジー〉10 〈社会:ウェブ〉12
・神谷医工が最近怪しい動きをしている。どこかのタタラをヘッドハンティングしようとしているらしい。

◆神谷医工の内情

〈社会:企業orテクノロジー〉10 情報屋〈売買〉8 〈交渉〉10
・神谷医工はドラッグや医療系サイバーウェアの開発を行っている会社で、付属の小さな病院もある。違法品スレスレの品も扱う、ちょっと危険な会社。

情報屋〈売買:12〉〈交渉:15〉 相応のコネでも可
・Dr.若宮を狙っているのは神谷医工である。ここは、たまに強引な(荒事を伴う)引き抜きを行う事でも知られている。

情報屋〈売買:15〉〈交渉:18〉 相応のコネでも可
・神谷医工は、イワサキのエグゼクの一人が株の多くを所有する、事実上イワサキの子会社である。(エグゼグのパーソナリティ)

情報屋〈売買:18〉 相応のコネでも可
・今回のDr.若宮に関する件はエグゼクの独走であり、イワサキ本社は関与していない。神谷医工が失敗すればイワサキはエグゼクを切り捨てるだろう。
・神谷医工の裏工作員が存在する。(裏工作員のパーソナリティ)

 

 

−−−−リサーチ B−−−−

◆新星都大学の内情

〈社会:テクノロジー〉8  Dr.若宮に聞く 無条件   適当な〈コネ〉10
・大学としては、荒事に関わるのは極力避けたいが、優秀なタタラを失う訳にもいかないので多少の援助(ナイト・ワーデンに依頼)だけして後は静観。
・大学のフィクサーとして遠山という男が存在する。

◆スポンサー企業同盟について

〈社会:テクノロジーor企業〉12  遠山に聞く〈交渉〉12  適当な〈コネ〉12
・新星都大学はいくつかの企業がスポンサーとして出資している(千早やイワサキもその一員)。大学は、優秀なタタラを企業に送り込んだり、またタタラが開発に成功した品を企業に買い取ってもらったりしている。誰かが素晴らしい発明をしたときなどは、スポンサーの企業が会議を開いて(これを大学では通称「企業同盟」と呼ぶ)その利権を調整する。それが決定した後では、タタラ本人や他の企業は口出しできない。

 

 

−−−−リサーチ C−−−−

◆Dr.若宮の発明品について

Dr.若宮or恵に聞く〈交渉〉制御値  テクノロジー系の情報屋〈売買〉18
・オートマンと演神を組み合わせたようなIANUSオプションで、これを通じて人体の大脳部分の経験や感情や記憶、人格、自我などのデータを出し入れできる。よって、他人からコピーした経験知識の大脳への書込も可能(システム的には、組み合わせ可能で、かつ2Lv.以上も可能なオートマン。Lv.はコピー元のものに準ずる)。ただし、現段階では書き込みの際のノイズ(雑データ)の除去が完全ではないため同一人物でのコピー→書込でさえも精神障害を引き起こす可能性があり、まして他人からのコピー→書込ではコピー元のスキルのデータとそれに結びついている記憶や自我などのデータの分離が不完全な為、書込先の人間に重大な人格障害を引き起こす可能性が高い。よって、この研究はまだ企業などに渡す訳にはいかない。ただし、書込先がドロイド体であった場合などには、精神障害や人格障害は起こらないため(元が白紙のため)、ある人物の人格・スキルの単純な量産体の場合は全く問題がない(つまり、同人格・同スキルのドロイドが量産できる。軍事利用には最適。優秀な兵士が一人いれば、それを量産できる)。

◆Dr.若宮とその家族、その背景について

Dr.若宮に聞く〈交渉〉制御値  恵or巴に聞く〈交渉〉10  テクノロジー系の情報屋〈売買〉12(ただしウェブ上の恵のパーソナリティーについては分からない)
・パーソナリティの若宮修一、巴、恵を参照して適宜情報を与える。

 

−−−−リサーチ +α−−−−

※これは独立したフェイズではない

※これは、リサーチフェイズが始まってから、大学からの要請で若宮一家が知り合いの個人病院に移転するまでの間に挟む事。誰か(出来ればクグツ)がDr.若宮の発明品の正体を突き止めた直後がふさわしい。クグツが突き止めた場合は上司からの連絡が入って、その時点でそれを報告させる事。

※スポンサーの企業同盟で、Dr.若宮に対する利権調整の会議が始まった事を伝える。各護衛陣の任務は、この会議が終わるまでとなる。基本的にこの通達は千早からクグツに対して行われるが、クグツがいない場合、あるいはキャストが発明品を突き止められなかった場合は大学フィクサー遠山を通じてキャストに伝える。

 

 

−−−−リサーチ Z−−−−

 大学側(遠山)からDr.若宮に移転命令が出る。理由はこれ以上大学内で荒事が起こる事を避けるため。これは、大学側としては妥当な策であり、Dr.若宮は特に文句も言わず受け入れる。移転先は、大学が指定した、とある個人病院(岡本医院)。そこの院長にはDr.若宮も多少の面識がある。場所はイエローエリア。浅草の一画。

 移転の途中(路上)にて若宮一家とキャスト達は神谷医工の襲撃を受ける。

 敵:トループ 工作員(クグツ) 人数:適宜(7〜10)

 敵ゲストのクグツに脱出手段があれば、ここで一度登場させて、トループがやられた時点で退散させてもよい。

 キャストはこれを切り抜け、岡本医院たどりつく。その次の日、千早からクグツ、あるいは遠山からキャスト達にに連絡が入る。企業同盟の会議は、明日決定する予定とのこと。

−−−→クライマックスへ

 

−−−−クライマックス−−−−

 解決策はいくつかある。守りに撤するのなら、通達の日の夜(つまり会議の決定の前日)、岡本医院に神谷医工が最後の襲撃をかける。ゲストとトループの総力戦。

 能動的に討って出るのなら、通達に日の夜までに敵方の行動予定を調べ、キャスト側から襲撃をかける事も可。

 また、キャスト側によい案があれば、神谷医工を企業同盟に告発するなどして社会的に決着を付ける事もできる。ただし、しっかりとした証拠が必要。

−−−→エンディングへ

 

 

−−−−エンディング−−−−

 企業同盟の会議が終了する。Dr.若宮の開発品は現在未完成であるため、これの完成のためにさらなる資金援助をし、完成後は各企業合意の上で厳重に取り扱う事とする。また、今後彼に引き抜きなどを掛けようとする者があった場合、企業連合がこれを排除する。

 これにてキャスト達の任務は終了。各キャストに応じたエンディングを用意する事。

 若宮家族と個人的に親しくなった者には、家族の今後などにも絡めたEDを。いつか、恵が自分の体で微笑む事が出来る日を信じて…

END

1999.2.28
トレス コンヴェンションに捧ぐ
       桜久平守&金川仁
動話アトリエ

 


桜久版 報告書 金川版 報告書

 

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